生蕎麦の消費期限は意外と長い ~冷蔵保存、冷凍保存で長持ち~

十割蕎麦

生麺の十割蕎麦は、どれだけ持つのかを実験してみました。アイキャッチ画像は、丸5日(120時間)経過した麺(冷凍を解凍したモノ)で作った、おろし蕎麦です。

冷蔵庫を上手く使うことが鍵

家庭用冷蔵庫の機能が格段に進化しています。適切に包装をして、適切な温度管理ができる冷蔵庫(生麺は冷蔵室か野菜室)に入れておけば、製造から丸3日(72時間)は打ち立てと変わらない美味しさを保てます。寧ろ、打ち立てより、冷蔵保存した蕎麦の方が、熟成して円やかになり美味しいと言えます。
更に、上手に冷凍保存すれば、3週間程度は美味しさを維持できます。但し、解凍はチルド室限定で12時間程かけて解凍し、優しく扱うことが条件です。急ぐ場合は、冷凍のまま茹でると上手く調理出来ます。拙宅の日立製冷蔵庫は、昨年入れ替えたものですが、一般にいうチルド室のことを「特鮮氷温ルーム」という名称を使っていますが、より進化したチルド機能を持っています。

日立冷蔵庫 特鮮氷温ルーム

ジャパネット 冷蔵庫内は部屋ごとに温度が異なる

前提条件(滅菌処理を意識した製法)

まずは、製粉段階
不純物の無い良質な玄蕎麦を、清潔な環境及び道具で石臼挽きし、袋詰めされていること。当然、食品衛生責任者の下で、製造されていること。
次に、蕎麦粉の保存
食品衛生管理法に準拠した冷蔵庫(隔測式温度計付)で、適切な温度で冷蔵保存されていること。
入念な手洗、仕事場・道具の掃除(消毒)
爪を短く切って、肘から下を薬用石鹸で入念に洗うこと。更に、清潔な環境で清潔な蕎麦道具を使用すること。調理器具や布巾、冷蔵庫内、流し台等は、次亜塩素酸ナトリウム6%液(ピューラックス-S)を使用した消毒をすること。
汗対策
汗そのものには雑菌はいませんが、汗が頭皮や顔を伝わると、皮膚表面の常在菌と混じり、この常在菌が麺体に付くことにより、消費期限を短くします。頭や首、手首等に、タオルや汗止めを着装し、汗を麺体や道具に落とさないこと。
包装及び、冷蔵、冷凍保存
打った直ぐの生蕎麦を冷凍対応のナイロンポリ袋に入れて抜気密閉し、直ぐに冷蔵庫の冷蔵室(3℃~5℃)又は、野菜室(3℃~8℃)、若しくは冷凍室(-18℃以下)に入れること。

1日目(打ち立て)調理14:00

8月27日午前10時に、夏蕎麦の粉2㎏で十割の極太麺を打ちました。
噛んで食べるおろし蕎麦用ですが、仕上がりは上々。大根おろしと創味のだしで作るダシは少し濃い目が合います。調理したのが午後2時。打ってから4時間経過した状態です。腰があり甘味が強く、食べた後、口の中に蕎麦の香りが残り「蕎麦食べた〜。感」があります。

2日目(調理8月28日8:00)22時間経過(丸1日)

初日に比べ、麺自体がしっとりとしていて、食感は円やかな感じです。蕎麦粉(十割)と水が、時間の経過と共に親和が進んでいるんだと思います。甘みが増しているような気がします。おろし蕎麦のダシは、大根のおろし汁に創味のだしを加えるだけのシンプルなモノです。蕎麦の味が損なわれるので、薬味のネギは敢えて入れません。鰹節は入れます。福井の老舗業者さん(太田屋)ですが、この鰹節はとても美味しい。おろし蕎麦専用のモノもありますが、沢山入っている写真のモノを使っています。大根は、皮を剝いてストックバッグに入れておけば1か月は問題なく持ちます(実験済み)。

3日目(調理8月29日8:00)46時間経過(丸2日)

熟成が進んでいることで、本当に美味しくなっています。本来、熟成とは、タンパク質が分解されてアミノ酸になる事ですが、その他にも、「エイジング(時を経る)」とか「寝かせる」という意味でも使われます。蕎麦はタンパク質が豊富な食べ物、温度管理を上手にして「寝かせる」と、蕎麦は美味しくなります。大きいフライパン(内径30㎝深さ8㎝)に湯(3ℓ)を沸かし沸騰したら一人分を投入、極太麺なので2kwMaxで約3分茹でました。氷で締めて盛り付け、蕎麦皿は越前焼のおろし蕎麦用。いつもの器の半分の量を入れましたが、なんか上品。割った割り箸1本分位の太さなので、噛んで食べますがもっちりして甘みもあり、美味しいおろし蕎麦です。3日目も美味しく頂きました。

4日目(調理8月30日10:00)72時間経過(丸3日)

4日目時点の変化は、冷蔵保存した生麺が、若干、乾いてきたように感じますが、匂いは変わらず、蕎麦臭だけです。乾燥が進んでいるのか、同じような茹で方(IH2kWで沸騰後3分)をすると、切れる麵があります。3日目と変わった点と言えば、これだけです。食べる分には支障はありません。茹でる鍋が大きいと、麺がゆっくり舞うので切れないと思います。食感は、前日、前々日と同じように、もちもちした甘みのある麵です。食べた後、口の中に蕎麦の香りが残ります。生麺は、熟成のピークを過ぎると徐々に腐敗に移行していきますが、4日目の段階では、腐敗は始まっていません。経験から言えば、匂いが変わります。

5日目(調理8月31日8:00)94時間経過(丸4日)

冷凍保存した十割蕎麦を、12時間かけて冷蔵庫のチルド室で解凍した麺で、おろし蕎麦を作りました。カチカチだった麺もチルド室で12時間かけると綺麗に解れますが、切れないか心配でした。解れた麵に、蕎麦以外の匂いはありません。優しく切れないように、沸騰した湯に投入、これから後は、昨日までの冷蔵麺と同じでした。IH2kwで3分、麺を泳がす速度を火力調整でゆっくりにしました。滑りを取って(滑りは余りありませんが)、氷水で締めて、盛り付けですが、殆ど切れていません。色も形も食感も、前日以前のものと変わりません。腰のある甘みのあるおろし蕎麦です。食べた後口に残る蕎麦の香り、味も同じです。5日目と言っても打った日が1日目ですから、正確には96時間経過の丸4日経過した十割蕎麦、ということになります。冷凍麺がどの程度持つのかも、検証していきます。
※チルド室:0℃という温度を利用して、ドリップ(食材から出る水分)が少ないままじっくり解凍できる。

6日目(調理9月1日10:00)120時間経過(丸5日)

5日目に同じく解凍した麺1人前を、更に、チルド室で24時間冷蔵保存した麺で、おろし蕎麦を作りました。蕎麦臭以外の匂いはありません。麺は、まだしっとり感がありますが、折れ曲がったところが2~3本切れています。昨日と同じような調理法でしたが、茹でる際、茹でた後は切れることなく、蕎麦の香りは薄くなりましたが、もちもち感のあるおろし蕎麦です。蕎麦食べた感を感じる口内に残る香りも同じです。盛付け後の見た目は、角が立っていて瑞々しく新鮮で、これまでのものと見分けが付かないと思います。チルド室(特鮮氷温ルーム)の機能、恐るべし。
実験用は1食分なので、大きいフライパン(内径30㎝深さ8㎝、3ℓ)を毎回使用していますが、湯を沸かす際と、麺を投入した直後1分間程度、専用の蓋をしていますが、沸騰するのが早くなり便利です。
冷凍保存した十割蕎麦を解凍し、更に24時間冷蔵保存(製造から丸120時間、丸5日間)しても、変わらぬ美味しさで十割蕎麦をいただけることが、証明出来ました。

包装の方法

販売させていただく十割の生蕎麦は、1食分(約150g)ずつキッチンペーパーで包装し、4人分を弁当容器(十号)入れ、打った直ぐの状態でナイロンポリ袋容器を入れて、抜気密封しています。ナイロンポリ袋は、冷凍対応なので開封せずに冷凍庫で冷凍していただくことが可能です。

冷蔵庫での保存方法

お買い上げ後、温度が一定に保てる、冷蔵室や野菜室に包装のまま入れて保管すれば、消費期限は4日です。冷蔵庫の扉の開け閉めが激しい場合は、消費期限は短くなります。最初のナイロンポリ袋を破り、一部をお召し上がりいただいた後、残りを保存する場合は、必ず、ストックバッグに容器ごと入れて冷蔵保存してください。
冷蔵と冷凍保存を上手く組み合わせれば、新鮮で美味しい十割蕎麦が毎日でも食べられますね。

 

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