年末は、何処の粉屋も蕎麦屋も大忙し。不肖、私も蕎麦打ちの端くれなので、一人前に忙しい思いをしています。1包み140gの細麺を4包み入れて1パックとしていますが、2キロ打ちだと5パック取れます。需要が多いと日に3回から4回打っています。
蕎麦打ちは奥深いモノで、これだけ集中して打っていても、毎回、何処かが違いますが、こんな時にこそ、基本を振り返り、名人の技を見習い、上達の鍵を手にしたい、と思っています。
「唐変木」主人の蕎麦打ちビデオ
私が蕎麦打ちを習ったのは蕎麦道場ではなく、YouTubeにアップされた各蕎麦打ち名人のビデオ画像でした。そんなビデオの一つですが、とても参考になるので、ご紹介します。
そのビデオは、テレビの収録分がアップされているもので、エピローグとして主人の生い立ちや蕎麦との出会いのエピソード、自家製粉の様子等が紹介され、メインは、主人が蕎麦を打つ姿の収録となっています。55分22秒の長いモノです。10年前位に出会い、私の3段位取得も、福井県池田町のふるさと道場であったこと、蕎麦打ちの板が当時、池田町で買い求め今でも使っている板と同じであることに親近感を抱き、ズーと、師のように思ってきました。
改めてこの主人の蕎麦打ち姿を見て、見習っていることを書いて行きます。
水回しの水は 事前に計らない
何人かで打っている時に、今日の粉、水はどれだけ、といった情報交換をしますが、それほど水回し時の水の量は重要です。私は、何時も粉の重さの半分プラスマイナス5%、で予測を立てて、水の量を計っておき、粉の纏まり具合を見て調整しています。ところが、主人は、最初から水の分量は計らない、あくまでも、その時の温度、湿度、粉の状態を見て、指先の感覚で水の量を判断している、という話をしています。何回打っても、加水量を間違えないためには、相当量の経験が必要だと思います。私等は、まだまだ、アバウトです。
真ん丸 真っ平
水回し、捏ね、延し、切りという一連の作業は繋がっていて、何処かで狂うと最後まで狂う、見つけた段階で補正しないと上手く打てない、ということですが、主人は、真ん丸真っ平、を基本に延しの最初の作業を行っています。丸く纏めた胴を打ち台で、まず手で丸く延ばし、次に麺棒で平たく延ばしていく行程での話で、この時の作業が真ん丸で真っ平でないと、次の四つ出し(角出し)の時に変形し、綺麗な長方形に延ばせない、ということです。
四つ出しが上手くいくと、確かに麺体が上手く延びますし、厚さが均等な長方形に延ばせますが、この行程が又、難しい。大抵、どちらかが長くなり、肉分けの時に無理をして形を整えるので、厚さにムラが出たり、厚さを揃えると形が崩れるという結果になり、結局、畳んで切る段階で、短い麵が出来てしまう、ということになります。ここでの失敗は、切り屑が増える原因でもあります。
私も、主人に肖り、呪文のように呟きながらこの行程を行っていましたが、改めて、意味の重要性を理解するべき、と自戒しています。
裏面も延す
延しの作業は、表だけというのが殆どですが、主人は、必ず、裏面も延しています。延し棒の面と延し板の面とでは、滑らかさが異なるようで、確かにこの一手間で綺麗で締まった麺体になるようです。福井には有名な蕎麦屋さんが何店舗もありますが、超有名店の店主も、同じように裏面も延ばしているビデオを見つけました。その店主も、池田町のふるさと蕎麦道場の出身で、免許皆伝第1号だということで、親近感を感じています。美味い蕎麦屋は、裏面も延している、ということを確認しました。これは是非、真似をしなければ、と思い、実践しています。
何本切るかで、1人分の重さが分かる
延しの行程で厚さが均一になり、綺麗な長方形に延ばすことが出来れば、畳んだ時に反物のように厚さが均等な、端が揃った長方形になるはずです。その整った形の麺体を、太さを揃えた切り方をすれば、切った数、切れた本数の数で、1人分の重さが揃う、ということですが、これが又、難しい。厚さが異なる麺体を切り幅がマチマチの切り方では、本数で重さは決して揃いません。茹でてみたら、太いのや細いのが混じる麺になり、それが手打ちの証拠や、と負け惜しみを言うことになります。
切りは苦手、蕎麦打ちは一生の修行
YouTubeの蕎麦打ちビデオは相当見ていますが、切りのスペシャリストのビデオもあり、勿論プロの方ですが、チャンチャン、チャチャチャチャチャチャ・・・・・と、小太鼓を叩くが如くの包丁捌きを披露している名手もおられます。しかし、唐変木の主人は、これが歴40年のプロの切り方か、と思われるでしょうが、と謙遜しながら蕎麦打ちは一生の修行であることを説いておられます。
忙しい時こそ、基本を振り返る。この年末、私の蕎麦を待っていてくださる人のために、もう一度、基本を振り返りながら、名人を見習って蕎麦を打っています。お師匠様、ありがとうございます。
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