越前おろし蕎麦の器、十割蕎麦の食べ方、楽しみ方

十割蕎麦
おろし蕎麦の器も時代によりかなり変遷しています。赤絵皿が主流だった頃、越前焼の各窯元がおろし蕎麦の器の販売しだした頃、色々な形のおろし蕎麦に応じた器をチョイスしている現代と、器だけを見ていても楽しいと思います。おろし蕎麦の器の話、おろし蕎麦の簡単出汁の作り方、蕎麦前の習慣等を書いてみます。

おろし蕎麦の器

1人前生麺で、普通盛120g、大盛140gが大体の相場かと思いますが、イベント等ではもう少し少なく盛っているようです。大人だと2~3杯食べないとお腹がふくれない、というか満足できないのが、越前おろし蕎麦だと思います。子供の頃からおろし蕎麦を見ている私は、蕎麦屋さんの器の大きさが気になります。何か小さくなったような。1杯の量は器によりますので、私は少し大きめの器を使っています。

普段使いのおろし蕎麦の器

茶碗屋で、10枚絡げて幾らのモノ2種類です。
一つは、単純な藍色の模様が書いてある少し重い感じのモノですが、家族で食べる時用に数を揃えています。割れても元が安いので、食べることに集中できます。
二つ目は、赤絵皿です。近所の、今では超有名店の蕎麦屋さんでは、昔から赤絵皿を使用されていましたので、私には、おろし蕎麦の器というと赤絵皿という印象が刷り込まれていますので、普段使いでも赤絵皿を数枚、揃えています。

赤絵皿

越前焼

越前焼は、平安時代末期から続く日本六古窯で日本遺産に認定されています。これまで時代に応じた甕、すり鉢等の生活用品を生産してきましたが、近年、若い作家達も加わり新しい形の越前焼が作られ、おろし蕎麦の器も制作されています。色も形もバラエティーに富んでいて、近代的な焼き物になっています。越前焼工業協同組合のHPによれば、越前焼は、地元の鉄分の多い陶土を使用しており焼き上がりが渋くなるのがその証で、温かみがあるのが特徴だそうです。
陶器作りの行程で土を練る際に菊練りというのがありますが、素材は全く異なりますが蕎麦打ちに通じるものを感じます。
六軒の窯元がそれぞれの感性で制作した蕎麦皿がセットになって販売されており、頂いた物ですがお客さん用に1セット用意しています。それぞれに味がありますが、国成窯の作品は十割蕎麦に合うものと感じています。

国成窯のおろし蕎麦用の鉢

蕎麦猪口

十割蕎麦は、おろし蕎麦で食べることが殆どですが、付け麵で食べることもあります。笊そばの容器か大きな竹笊に盛って、蕎麦猪口に入れた出汁に付けて食べますが、蕎麦猪口も集めると面白いものです。以外に色々な窯元が作っていることが分かりました。蕎麦を入れる容器として制作しているのでは無いのかも知れませんが、写真のモノは、家族旅行で行った沖縄で買ったモノです。ガッシリとした躯体で沖縄らしい色彩が施されています。数を集める趣味はありませんが、気に入った蕎麦猪口を買っています。

沖縄で買った蕎麦猪口

お手軽、おろし蕎麦の出汁の作り方

大根おろし汁と創味のだし

おろし蕎麦というと、冷たい蕎麦に大根おろしをかけて食べるものですが、大根おろしの使い方や出汁は、お店や打ち手によって色々と異なります。
高級な鰹節や煮干しを使用して自前で作る出汁もありますが、手軽でお勧めなのは、大根おろし汁に創味のつゆを混合する方法です。出汁は確かに命ですが、十割蕎麦の場合、出汁の味風や味が強すぎると、蕎麦の風味が負けて出汁の味しか口に残らなくなります。あくまでも蕎麦が主役ですから、出汁は出しゃばらずに脇役にならないと、と思います。
作り方は簡単です。大根を卸金でおろし、布巾等で汁を絞ります。夏大根は汁気が少なく冬大根は多く取れます。大根の大きさによりますが、1本で約500㏄は取れると思います。この大根汁に創味のつゆを混合するだけでおろし蕎麦の出汁は完成です。大根は、種類や季節により味や辛さが変わり、なかなか、一定の出汁はできません。季節季節の大根を使えば良いのですが、味付けは創味のつゆが一番だと思います。何せ、お手軽です。大根汁が足りなかったら、水増ししても大丈夫です。
卸金の種類で大根おろしの味も変わります。以下も参考にしてください。

塩味のトロトロ蕎麦湯

蕎麦猪口で食べる十割蕎麦の食べ方で超お勧めは、トロトロの蕎麦湯に塩味を付け、その蕎麦湯に十割蕎麦を付けて食べる食べ方です。混じり気一切なし、蕎麦と水と塩だけ。蕎麦の味と風味を独占的に楽しめます。薬味を入れるなら、おろし山葵が良いでしょう。
トロトロの蕎麦湯は、作るタイミングが難しい。トロトロの蕎麦湯とは、蕎麦を全部茹でた後、火を落として蕎麦湯の上澄みを捨て、蕎麦粉が沈殿しているトロトロの蕎麦湯のことですが、このトロトロ蕎麦湯に塩味を付けた付け汁で食べる蕎麦は、絶品、極上です。

蕎麦前

自宅で十割蕎麦を打ち、人様に差し上げたり家族や自分で食べたりしている蕎麦道楽ですが、蕎麦を打つ日は何時も忙しく、打つだけ打ち、パッケージもし、茹でる際は釜番もし、盛り付けもトッピングもし、と一人芝居をしています。偶には、ゆっくりと蕎麦を味わいたいと思っています。
蕎麦前という言葉をご存じでしょうか。江戸時代の蕎麦屋は注文があってから、蕎麦を打ったり茹でたりで、出すまでに時間がかかったことから、その間、ちょっとしたつまみ(蒲鉾、出汁巻き卵、天婦羅、焼き海苔等)で日本酒を一杯という待ち時間の過ごし方があったそうで、時代劇でも良く撮られているシーンですね。
蕎麦屋で食べる蕎麦というと、今は殆ど昼食、しかも時間を殆どかけず食べる、車社会なので飲食中のお酒もご法度、増してはコロナ禍の現状では、という感じで、昔の蕎麦屋の楽しみ方とはかなり異なりますね。美味しい蕎麦こそ、ゆっくりと味わって欲しいものです。
福井は米どころ、おいしい酒も沢山あります。普段は、赤ワインしか飲みませんが、偶には日本酒の四合瓶(常山がいいかな)と安田の蒲鉾を買って来て、自宅でゆっくりと蕎麦前を楽しみたいと思います。

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