鮫皮の包丁の柄

十割蕎麦

現在、メインで使っている包丁には、鮫皮を加工して巻き付けています。近年、加工方法が余り広まっていませんのでご紹介します。

鮫皮

名前は鮫皮ですが、実はエイの皮です。南シナ海、インド洋に生息するエイの一種でツカエイ等の「真鮫」と呼ばれる魚の皮を言います。その「真鮫」の背面中央部の皮をはがし、乾燥させたものを鮫皮と呼び、昔から刀剣の柄の滑り止めに使用されていました。刀剣の鞘に使われる場合は、表面の凹凸が無くなるまで研磨し着色した後に漆で仕上げますが、まるで梅の木の皮に似た模様になるため、梅花皮の名前があるそうです。他にも剣道の防具の胴に使われたり、やすりとして使ったり、調理用具としては、山葵おろし器があります。
昔から装飾用の皮として珍重されてきましたが、1990年代から高級な財布やペンの材料として国際取引されるようになり、東南アジアで大量に捕獲されているが、長命で繁殖力が低いため、乱獲は種の危機に晒すと考えられているそうです。   ~Wikipedia参照~
鮫皮を販売しているお店も複数あるようですが、HPでは、何れも現品限りとか品切れとかの表示になっています。今では貴重なものですね。私は、十年位前に会津中村豊蔵商店で買い求めました。

加工方法

大きさは私が買い求めたモノで40㎝位あったと思います。目の様に二つの穴が開いています。表面は全体的に硬くて細かい白い粒が並んでいてザラザラしています。裏面は動物の皮が乾燥したような感じです。表面の真ん中に大きな白い粒が列になって並んでいて、この粒が大きいモノの方が高価なようです。商品は、乾燥しているので硬い一枚のプラスチックのような感じのモノでした。こんな硬いモノが柄に巻き付くのか?と感じましたが、商品の取扱説明書には、ぬるま湯に浸し柔らかくする、とありました。

柄の形を型紙に取る

包丁の柄に紙を巻き付け、型紙を取ります。この型紙を、硬い状態の鮫皮の上に置き、鉛筆でなぞり形を移します。この際、握った場合の鮫皮の模様をよく考えることが大事です。特に鮫皮の真ん中に白い大きな粒の一列がありますので、この列をどう使うかを考えます。
私は写真の様に、柄の上部の先端部分、よく目立つ所に配置しました。

包丁を真上から見た写真 柄の先に大きな星

鮫皮をぬるま湯に浸す

大きめの容器(鮫皮がスッポリ入る程度)に少し熱い程度の湯を張り、鮫皮を浸けて柔らかくします。時間は1時間程度だったと思いますが、柄に巻き付ける程度に柔らかくなったかが目安です。厚みがあるので、フニャフニャになることはありません。

柔らかくなった鮫皮を柄に被せる

鮫皮を、予め型紙から移した鉛筆の線を意識して柄に被せます。大事なことは、繰り返しますが白い大きな粒列を何処に貼るか、持ち易いかです。

余分なところを切り取る

大きな握り鋏か裁ち鋏を用意すると良いでしょう。鮫皮は、柔らかくなっても皮がかなり硬いので、小さな鋏では切れません。最初は余白部分を大きく切り取り、少しずつ削るように切ると上手くいきます。

完全に乾燥するまで紐で固定する

柄に余分なところを切った鮫皮を被せて、紐でグルグル巻きにします。こうすることで柄の形にピッタリな鮫皮が出来ます。丸1日、そのような状態で鮫皮を乾かします。

乾いて形が出来たらカッターで形を整える

接合部分や切り口の乱れている所を、傷を付けないように指を切らないように、慎重に形を整えて行きます。最終工程はボンドで接着するのですが、貼り付けた後では微調整が難しいのでこの段階で綺麗にしておきます。

木工ボンドで接着する

皮なのですが、木工ボンドが一番良いようです。柄と鮫皮の裏側の両方に薄くボンドを塗り、半渇きの状態で圧着すると上手く接着出来ます。貼り付けたら、再度、紐でグルグル巻きにして固定します。乾くと柄が半分透き通るように見えますが、一旦乾けば、包丁を柄ごと水やお湯で洗っても大丈夫です。

柄尻 木工ボンドで簡単に接着出来ます

鮫皮の入手が困難な時代ですが、手に入ると思います。一度、チャレンジしてみては如何ですか?
作業は、結構、手間がかかりますが、市販品が殆ど無いので、オリジナリティを味わえます。握り具合は、柄の形通りですが、適度なブツブツが手に馴染み、滑らずしっかりと手の中にフィットします。古の武士が、刀の柄に鮫皮を施した意味が分かります。

 

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