楽しみは、石挽き蕎麦粉のブレンド

十割蕎麦
昨年末は、例年の3倍以上の蕎麦を打ちました。昨年末は、予てより投稿しているハーネス河合さんの福井在来種石挽蕎麦粉と、昨年半年かけて整備した自作電動石臼で挽いた数種類の蕎麦粉を使いましたが、蕎麦粉をブレンドすることの面白さを再確認しました。ここでは、石臼で挽いた蕎麦粉に限定して書いて行きます。

玄蕎麦を挽く

まず、玄蕎麦を石臼で挽いた場合の蕎麦粉。この蕎麦粉は、蕎麦殻も一緒に挽くので、黒くなりますが、排除できる蕎麦殻以外の蕎麦の実全てを味わうことが出来ます。挽いた粉には星と呼ばれる殻の微粉が混じります。福井在来種玄蕎麦の60メッシュの篩を通った粉だけを使えば、簡単に細くて腰の強い十割蕎麦も打て、「玄蕎麦十割の十割蕎麦」を楽しめます。
丸抜きの真っ白な蕎麦粉を使った蕎麦と比べると、黒くて僅かに蕎麦殻の苦みがありますが、甘皮も一緒に挽くので蕎麦本来の味がします。昔、蕎麦殻を取る機械が無かった頃は、玄蕎麦をそのまま石臼で挽いたのだと思いますが、蕎麦粉の粘度が低かったり、粒度の粗い蕎麦粉しか取れなかった場合は、つなぎを入れる必要があったのだと思います。現代は、石臼は電動化され、玄蕎麦からを挽いても粒度の細かい(60メッシュ以上の篩を通る粉)が取れますし、特に福井在来種の玄蕎麦なら粘りがあるので、簡単に十割蕎麦が打てます。美味しい蕎麦になりますが、色が黒く見た目、粗野な感じがすることで、余り好まれないのだと思います。いわゆる田舎蕎麦で、粗い粉や欠片を混ぜても楽しめます。

☆田舎蕎麦の対極

更科蕎麦:一番粉だけで打つ蕎麦を更科蕎麦と言いますが、一番粉は蕎麦の実の真ん中の部分で、真っ白でサラサラしています。一番粉を使う十割蕎麦は余り聞かないので、難しいのだと思います。江戸蕎麦の御三家、更科、砂場、藪の一画ですが、200年程前江戸の麻布氷坂町の「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」という店が発祥で、高級感のある白さと喉越しの良さで人気を博した蕎麦ですが、当初から蕎麦の香りはしなかったとのこと。

丸抜きを挽く

丸抜きを作る機械は、かなり高価なので粉屋さんか余程の蕎麦道場しか所有していないと思います。自分の石臼で製粉をする殆どの方は、粉屋さんで丸抜きを買っていると思います。私もそうですが、昨年の暮れはハーネス河合さんの丸抜きを使いました。蕎麦専業農家の吉田裕一さんが育てた福井在来種玄蕎麦の丸抜きは、粒揃いの緑がかった綺麗な実で、数粒噛んでみると、口内に蕎麦の甘みと旨味が広がり、香りが鼻を抜けます。私は、蕎麦粉もそうですが、必ず、口に含んで味を確かめています。丸抜きは、ポリポリと噛めますので、わざわざ麵にしなくても味と香りは楽しめますから、粉を挽く際はおやつ代わりに食べています。
挽くとどうか。ハーネス河合の手入れ完璧な大きな石臼で挽けば、サナ粉は僅かで、殆どが60メッシュの篩以上の、白いしっとりとした微粉になります。甘皮も細かく挽き込まれるので、香りと旨味が強い蕎麦粉が取れます。この粉で打つ十割蕎麦は、薄い緑色の綺麗な麺になります。

玄蕎麦と丸抜きを混ぜて挽く

挽く時に玄蕎麦と丸抜きを、一定の割合で混合して挽く方法です。
この方法は、粉屋さんか石臼を所有している人しか出来ませんが、石臼の特徴に応じた粉が出来ます。自家製粉をしている蕎麦屋さんも、この方法で独自色を出しているようです。無論、粗挽きや欠片も混ぜてのことですが。この方法は、店主とお客さんの好みに合った粉にすることが可能なので、私も色々と混合率を変えて研究しています。この方法での粉の挽き方、作り方は、これからの課題です。

玄蕎麦の粉と、丸抜きの粉をブレンドする

挽いた粉をブレンドする方法です。気の利いた粉屋さんならしてくれると思います。ブレンド率を変えて商品化しているお店もあります。或る程度、お店任せですが、自分で別々に買い求め、ブレンドするのも面白いと思います。石臼を持っている方は、自前で出来ますが、少量だと面倒です。私は、昨年末は消費量が多かったので、玄蕎麦と丸抜きの両方を買い求め、時間をかけてそれぞれを挽いてブレンドしてみました。的確なブレンドには、相当数の経験が必要で、混合率が低ければ、正直、微妙過ぎて分かりません。
3割と5割という混合率でブレンドしましたが、食べていただいた人には3割率の、少し黒っぽい蕎麦の方が、蕎麦本来の味がする感じがする、と好評だった気がします。因みに、玄蕎麦の粉だけで打った蕎麦を、懐かしくて美味い、もう一度食べたい、と言われた人も若干名ですが、おいででした。好みと味覚は、それぞれですね。
写真は、ハーネス河合の丸抜きの粉(上)と、自家製粉の丸抜きの粉(下)です。上記事の粉の写真が自家製粉の玄蕎麦の粉です。(分かり難くてすみません。)

粗めの粉、蕎麦の実の欠片を混ぜる

粗めの粉や欠片を取るには、殻を割った際に抽出する方法と、石臼の回転数を上げて粗挽きして抽出する方法がありますが、これらを細かい粉に混ぜて蕎麦を打ちます。
蕎麦は喉越しで、と言う方には向かないと思いますが、そんな拘りは無いというお方には是非、お試しいただきたいと思います。粗めの粉や欠片の混ざった蕎麦麺は、よく見ると白い粒が見えますし、噛むとプチプチと音がします。全体的に60メッシュ以上の細かい粉に混ぜて打てば、十割蕎麦も出来ますし、麺に腰もあります。福井在来種の玄蕎麦粉は粘りがありので、この方法に最適だと思っています。普通のツルツルとした蕎麦麺に飽きた方、お試しあれ。美味しいですよ。

レパートリーの広さが、蕎麦の楽しみ

玄蕎麦を挽いた粉で打つ蕎麦は、星が混じる黒くて腰のある、噛んで食べる田舎蕎麦になります。いわゆる「十割の十割蕎麦」。その粉に粗めの粉や欠片を混ぜれば、独特のプチプチ感を楽しめる蕎麦にもなります。
丸抜きを挽いた粉で打つ蕎麦は、茹で上がりが極薄い緑色で甘みがある上品な蕎麦になります。粉が細かければ、極細麺も可能で喉越しも楽しめる十割蕎麦が出来ます。
玄蕎麦を挽いた黒い星の混じる粉と、丸抜きを挽いた白い粉のブレンドで、全体が少し黒っぽい、星が見える蕎麦にしたり、混合の割合を上げて黒みを深くしたり、粗挽き粉や欠片を混ぜてみたりと、ブレンドすれば出来上がる蕎麦のレパートリーが広がります。同じ玄蕎麦から、幾つもの種類の蕎麦が出来る不思議を感じます。
粉屋さんから丸抜きを挽いただけの白い粉で毎回、打っている蕎麦に飽きてきたら、是非、お試しあれ。楽しさが三倍増になります。
私は、十割蕎麦以外は打ちませんが、一般には、つなぎの種類を変えたり、つなぎの割合を変えたりの楽しみもあります。蕎麦は奥が深い。何せ、3割以上蕎麦粉が入っていれば蕎麦と言える、という世界ですから。

 

 

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